ヴァナキュラー礼賛

民俗学の敷居を低く


 島村恭則『みんなの民俗学』(平凡社新書、2020)を読んでみました。一般的に農村などの風習とかを扱う、やや古くさいイメージ(固定観念というか偏見というか)がつきまとっている「民俗学」ですが、その敷居を思いっきり下げてみせる良書です。なにしろそこで研究テーマとして取り上げられているのは、家族のなかで生じるちょっとした「習慣」だったり、そういったものから転じているかもしれない都市伝説だったり、喫茶店の「モーニングサービス」の由来だたり、B級グルメの来歴だったり……。国外に目を転じれば、アジアの水上生活者たちの生活様式などを追ったり……。

 それらをつらぬくキーワードは、「俗習」を意味するヴァナキュラーです。その奇妙に錯綜した成立過程や意味の多様性などは、とても面白く、奥が深そうです。扱えるテーマもまだまだたくさんありそうですよね。これは「ぜひ研究してみたい」と思う若い人とか結構いるんじゃないでしょうか。

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