嫌われ者スピノザ

虚軸となったスピノザ


 積ん読から、岩波『思想』の2014年4月号を見ているところです。「スピノザというトラウマ」という特集で、上野修氏が中心となってスピノザ受容史の二つの大きなフェーズを検討しなおすという号になっています。

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 二つのフェーズのうちの一つは、ドイツ観念論の隆盛期でのスピノザもしくはスピノザ主義の役割です。当時の思想界においては、スピノザの思想は忌避すべき対象(無神論的・決定論的)とされ、それと対立する形で観念論が定立された側面がある、ということのようです。なぜそれほどまでに忌み嫌われたのかとか、それはスピノザ本来の思想だったのかとか、あるいはカントなどの哲学は本当にそれを対立軸として成立していたのかとか、いろいろな面が問題含みで、とても刺激的なテーマになっているのですね。

 もう一つのフェーズは、いわゆるドゥルーズなどフランスの1960年代ごろの思想です。そこではスピノザはむしろ好意的に受け入れられていたということなのですが、これも、同じように哲学史的には様々な問題点をはらんでいるようで、これもまたとても面白そうです。