大下宇陀児

これぞ奇想、という数々


 初秋くらいから、大下宇陀児の短編集を読み始めていました。『偽悪病患者』(創元推理文庫、2022)です。これは断然面白い!手紙のやりとりで事件が描かれ解決する表題作のほか、都市伝説・怪談をモチーフにした幻想奇譚とでもいうべき「魔法街」とか、凝った趣向の短編がずらり並んでいて楽しめました。犯罪小説としては、三角関係ものとかが割と多いのでしょうかね。とにかく、ノーマークだった短編の名手です。

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 創元推理文庫からはもう一冊出ていますが、kindle unlimitedにもいろいろあるようで、「日本探偵小説全集9巻」が大下宇陀児作品集になっていて、中編「闇の中の顔」などが収録されています。これは途中から冒険小説っぽくなっていくもので、江戸川乱歩などの一部の作品を彷彿とさせます。

 wikipediaによれば、大下は「変格派」探偵小説を標榜し、トリックや謎解きよりは人間像を重視したのだとか。それもまた個人的に合う感じがし、好感がもてました。作品はまだまだたくさんあるようなので、しばらく楽しめそうです!