アッティコス

これまたちびちびと読んでいた希仏対訳本『アッティコス – 断片集 』(“Atticus – fragments”, trad. Édouard des Places, Les Belles Lettres, 2002″。主要部分は一通り目を通したが、これもまた面白い。中期プラトン主義のヌメニオスのちょっと後くらいの時代の人(二世紀)だというけれど、なにやら生涯とか詳しいことはわからないという。プラトンとアリストテレスを折衷しようという動きに反対しているようで、基本的に両者は相容れないという立場に立つようだ。たとえば「生まれたものがすべて滅するとは限らないし、滅しないものがすべて生まれたものではないとも限らない」みたいなことを言ってアリストテレス的な世界の永遠の議論に釘を刺していたりする。また、そもそもアリストテレスに対して否定的で、「プラトンは第一の物体こと元素は四つとしているが、アリストテレスは第五の元素を持ち込んで数を増やしている。(中略)唯一アリストテレスだけが他の元素にある質をいっさい持っていない、いわば物体ではない物体を持ち出してくる」と、第五元素(というか第一質料かな)をまったく認めていない。ヌメニオス同様、正統派のプラトン主義はわれにありと言わんばかりで、それほどに折衷派との対立は根が深かったんかなあ、と思わせる。