ビブリオメトリー問題

Le Monde diplomatique12月号をずらずらっと眺めていたのだけれど、巻末を飾っている記事を見て、うーん、フランスもか、という思いに……。ピエール・ジュルド「いかに『今月の研究者』になるか」という文章なのだけれど、要するにこれ、アメリカ式の研究業績評価をフランスも導入するという話で、それに対する反対運動が起きているというレポート。その場合の研究業績評価というのが、学術誌をランク分けして、ランクの高いもの順に、掲載された論文の数などで点数が決まるというやり方(さらには引用数を加味するのだとか)。この文章では「ビブリオメトリー」という用語でそれを表している。理数系では昔からある方式を、人文社会系にまで適用するというので軋轢が生じているという、すでにどこかで聞いた話(笑)。だけれど、これに各方面から反対ののろしが上がっているというところだけはさすがフランス。で、この圧力を受けて、評価を担当する研究・高等教育評価局(そんなのが出来てるんすね)はすでに、フランス文学と比較文学についてはとりあえず学術誌の格付けを保留しているとか。

反対理由の一つには、アングロサクソン系の学術誌の過大評価が挙げられている。そのため論文がそちらに集中し、結果的に評価と論文集中のスパイラルが生じる。フランス語で書かれた周辺国の学術誌などは低い評価に貶められ、二極化がますます進む……と。このあたり、学問的覇権が事実上英米に奪われていることが如実に窺える。やはり基本的に、財力(研究予算とかの)とそれに伴う象徴的権限(成果がもたらす)との相乗関係が大きく関係しているような感じはする。となると、今回の景気後退で状況は変わるかも……。なら、再度の覇権奪取に向けてフランスは(というかEUは)、米国流の定量方式に追従するのでなく、それに替わる別の評価方法を考案しないとね。定量方式でもなく、かといって徒弟制度みたいな閉鎖的なものでもない第三の道って、本当にないのかしら?

081201-3