実に久々の観劇。新国立劇場でのコルネイユ作『舞台は夢(イリュージョン・コミック)』(鵜山仁演出)をマチネで。最初はちょっとすべりそうな感じもあったのだけれど、途中からはなかなかテンポもよく、観客の笑いをうまく誘っていた。いや〜、それにしてもコルネイユの作品が上演されるというのがなにより珍しく、また嬉しい(笑)。1635年の作だけれど、いわゆる劇中劇もの。劇中劇としてはもしかして最初期?少し前に文庫クセジュからアラン・ヴィアラ『演劇の歴史』(高橋信良訳、白水社)を読んだけれど、その中でもこの作品は重要なものとして紹介されている。それによると、1630年頃、アリストテレスをベースにして、時、場所、筋が単一でなければならないという主張(三単一の規則)をする一派(「規則派」)が、それらは多様で構わないとする一派と論争を繰り広げた。で、規則派が優勢になるのだけれど、コルネイユは三単一の規則に従いながらそれを巧みにすり抜ける方法を、この『イリュージョン(後の「イリュージョン・コミック」)』で実現してみせたのだという。同書は劇中劇の成立史みたいな話は直接取り上げていないけれど、そのあたりの記述からも、劇中劇が成立するには、やはり劇の世俗化と、それだけでなくなんらかの精緻化がなければならないということが窺えるし、おそらくこのコルネイユがその嚆矢ということになりそうだ。うん、ほかの作品もぜひまた上演してほしいところ。