基本的に地図とか図面とか見るのが好きなのだけれど、そういう意味でもこれはとても楽しい一冊。伊藤毅編『バスティード―フランス中世新都市と建築』(中央公論美術出版、2009)。雑誌大の大型本で、写真や図面などを多数収録した「見て楽しい」研究書。前半はバスティードの総体を多角的に論じる総論、後半は代表的なバスティード都市を個別に詳述する各論という感じ。バスティードというのは、13世紀ごろから作られ始められたという中世の新都市のことなんだとか。領主間契約の存在とか、広場を中心とした格子状の町並みとか、いろいろ定義はあるらしいが、その輪郭は意外にぼやけているのだという。ローマの都市に代わるようにして成立してきたというそれらの都市群に、同書は様々な視点からのアプローチをかけている。これはなかなか面白そうな研究領域だ。編者が序文で述べている「都市イデア論」的な視点からのアプローチというのに、個人的には大いに興味をそそられる。