オリヴィの質料論

昨年羅仏対訳本で出たペトルス・ヨハネス・オリヴィの『質料論』(Pierre de Jean Olivi, “La matière”, trad. T. Suarez-Nani et al., Vrin, 2009を読み始める。これはオリヴィの主著『命題集第二巻問題集』から、問題16から21を採録したもの。問題16は「天使のほかすべての知的実体は質料と形相から成るかどうか」というもので、これが採録テキストのかなりの分量を占めている。まだほんの最初の部分しか目を通していないけれど、のっけからぐいぐい引き込まれる。興味深いのは、メルマガでもちょっと触れたけれど、オリヴィが質料を無定形のものとは見ず、むしろ質料を不完全な現実態として扱い、形相との区分をどこかあいまいなものと見なし(相対化し?)再考していること。形相は本質的部分、質料は偶有的な部分を担うという従来の図式についても、現実においては基体はすべて偶有によって形相を受け取る以上、先行部分(本質)が後から来るもの(偶有)に依存することになる、みたいに言い、ある種の価値転覆のようなことをやっている(のかな?)。うーむ、ちょっと強烈。これまた読みながらメモしていこうかなと。