ケンブリッジ中世哲学史

少し迷った後に、結局注文を出した『ケンブリッジ中世哲学史』(2巻本)(“The Cambridge History of Medieval Philosophy (2 Volume Boxed Set)”, ed. Robert Pasnau, Cambridge University Press, 2010)が届く。さっそくちらちらと見ているところ。テーマ別編集なので、引きやすそうな印象(辞書じゃないけれど)。問題を扱うときに初期段階で参照することを念頭に置いている感じの作り。とりあえず、第2巻の方にある形相と質料の話に目を通してみる。なるほど、すごく端的な記述なのだけれど、結構参考になるかも。第一質料を基底として質料・形相の複合体が一種の階層をなすという解釈(複合体がまた上位の形相にとっての質料をなす、みたいな感じで、オリヴィやドゥンス・スコトゥスに通じるものがある)は、古くはイブン・ガビロール(アヴィチェブロン)に見られるのだそうで(『生命の泉』は以前にを少しだけかじって積ん読になっているなあ……)、主にフランシスコ会系のスコラ学者がその立場を受け継いだものの、アルベルトゥス・マグヌスやトマス・アクィナスのころには、むしろ質料はあくまで物質界にのみ関わるという見識が席巻するようになったのだという。質料は純粋な可能態ではない、というスコトゥスの議論は、一方にはガビロールからの流れがあり、一方にはドミニコ会系の議論への反論という側面もあり……当たり前だが、結構背景は複雑かも。