書籍:『土とワイン』

土壌からのワインへのアプローチ


 アリス・ファイアリング、パスカリーヌ・ルペルティエ『土とワイン——土壌が教える自然ワインと造り手たち』(村松静枝訳、小口高・鹿取みゆき監修、エクス・ナレッジ、2019)にざっと眼を通しました。土壌がワインに与える影響についての本なのかな、と思って見始めたのですが、そうではなく(科学的な本ではないことは序文冒頭に宣言されています)、むしろ土壌(の分類)に注目したかたちでのワイン産地のガイド本、あるいはエッセイ本という体裁です。

 考えてみると、ヨーロッパの土壌の分布については、個人的にあまり知りませんでした。その意味で、これは刺激的な一冊でもあります。ワインそのものと土壌の関係性は科学的には立証されていないとのことですが、普通に考えて、ブドウの生育と土壌に関係がないわけはありませんから、こういう土壌をベースにしたアプローチも一概に否定はできないかも、という印象です。

 百科事典を書くつもりはなかった、と巻末に著者が記していますが、これは一種の産地別のガイド本と言えそうなので、できれば索引はもっと充実させてほしかったですね。あと、やはり科学的な知見もある程度体系的にまとめてほしいところでしょうか。

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