中国の思想的伝統と「美」

中国の伝統思想が導く、現象学的な生成の美学


 フランス在住の中国出身の詩人フランソワ・チェン。その著書『美についての五つの瞑想』(内山憲一訳、水声社、2020)を読んでみました。これはまさに良書ですね。まず、「美」とはなんぞや、という疑問に、正面から真摯に向き合う姿勢に、なにやらとても共感を覚えます。フランスを中心とする西欧の思想も引きながら、そこにチェンのバックグラウンドである中国の伝統的思想を突き合わせ、美というものが単に事物から析出されるのではなく、事物を目にする者の中に事物とともに立ち現れる、事物の本質的な「啓示」のようなものであることを説いています。

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 美を体現する最前線といえば、もちろん詩と絵画ということになります。チェンも同書で、中国の画論の伝統に言及しています。チェンは中国の画論の編纂なども手がけているようで、いくつか出ていますね。個人的に『気韻』("Souffle-Esprit. Textes théoriques chinois sur l'art pictural", Le Point – Éditions du Seuil, 1989-2006)を読み始めました(笑)。

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