ジラール・ド・ルシヨン

根津由喜夫『夢想のなかのビザンティウム – 中世西欧の「他者」認識』(昭和堂、2009)を読み始める。12世紀ごろの文学作品4本をもとに、作品中のビザンツ人の描かれ方などから、中世人がビザンツ世界をどう捉えていたかの一端を見ようという論考。まだ第一章だけしか見ていないけれど、取り上げられている「ジラール・ド・ルシヨン」がすでにしてそれ自体でむちゃくちゃ面白そうなのだ(笑)。これは未読。同書に概要がまとめられているのだけれど、シャルル禿頭王とビザンツ皇女姉妹をめぐって仲違いしたジラール・ド・ルシヨンが、その王の軍隊に攻め込まれ、逃亡者に身を落とし、妻となったその皇女の姉のほうの計らいで王と和解し、最後にはサント・マドレーヌ聖堂の建立話ががからんでさながら聖人伝みたいになるのだという。うーん、これはそのうち読んでみたいところ。

著者は作品のモデルになった歴史上の人物たちを掘り起こし、主要なモチーフ(姉妹の交換など)についても同じく史的な源流を探ろうとしている。きわめて堅実なアプローチ。ビザンツとの絡みについては、カロリンガ朝のビザンツとの関係が詳しく語られているけれど、作品を通じての「他者」受容史というあたりはあまり触れていない。まあ、まだ第一章だから、これからいろいろ展開するのだろう。二章以降は、「シャルルマーニュ巡礼記」、クレチアン・ド・トロワの「クリジェス」、そしてゴーティエ・ダラス「エラクル」が取り上げられる。この最後の作品も知らないものなので、さらに楽しみ。