ビザンツのイメージ本、読み再開

この間取り上げた根津由喜夫『夢想のなかのビザンティウム – 中世西欧の「他者」認識』。2章に入ったところでいろいろ用事などがあったりして中断していたけれど、晴れて読書再開(笑)。この第2章は「シャルルマーニュ巡礼記」を取り上げている。著者によれば、これにはルイ7世の東方遠征の記録や、サン・ドニへの聖遺物の「由来記」が色濃く反映されているといい、そもそもの成立がそのサン・ドニ周辺だろいうということで、カペー朝との絡みなど、政治的な要素も読み込むことができるテキストということらしい。で、全体的な話は、東方にもっとすごい王がいると奥方に言われたシャルルマーニュが、その王を探す旅に出かけ、途中で聖地に立ち寄り(聖地が目的地でないのがすごい)聖遺物の数々を得て、それからコンスタンティノープルで「ユーグ」というそのすごい王に会い、ホラ話の実現(神の加護による)という試練を経て、そのユーグを超えた王となって帰国するという、立場逆転物語。この話の構成やモチーフなどの解釈が一番の読みどころ。ユーグの宮殿が風力で動いたり、黄金の犂を繰っていたりするディテールの解釈は、諸説の紹介と相まってとても面白い。そもそもなぜ「ユーグ」というフランス名なのか、という問題の解釈も興味深いし。著者は総括的に、ビザンツに対する西欧人のコンプレックスや、勇猛さでは勝っているという自負が随所に読み取れるとしているけれど、全体としてどちらかといえば口承的なテキストだけに(たぶん)、浮かび上がるのはむしろ民衆寄りの(?)、あくまで類型化されたビザンツのイメージのような気もするのだけれど……。うーん、個人的にももう少し考えてみよう。