口上が後先になってしまったけれど、カルデア神託をめぐるミカエル・プセロスの書をいくつか読んでいく(訳出していく)ことにする予定。底本にするのは、フランスのベル・レットルから出ている『カルデア神託』(“Oracles Chaldaïques”, trad. E. des Places, S. J., Les Belles Lettres 1971-2003)の付録部分。カルデア神託は2世紀のユリアノス(カルデアの)もしくはその息子(魔術師とあだ名された)が収集し書き起こしたものとも言われるものの、実際のところの著者は不明。新プラトン主義の人々(イアンブリコスとかプロクロスとか)によって引き合いに出されるも、文書自体は現存しておらず、様々な著者が引いている断片が残るのみとなっている。内容も「三対」「世界霊魂」「知性」「天使」「コスモス」などなどのモチーフが織りなす、とても興味深いもの。
2008年のグラインドボーン音楽祭で上演された『ポッペアの戴冠』(モンテヴェルディ/L’incoronazione De Poppea: Carsen Haim / Age Of Enlightenment O De Niese CooteをDVDで数回に分けてと観た。「舞台映えする」と評価されるダニエル・ド・ニースが肉感的に転げ回っているのが印象的(笑)。また、従者たちが性別を入れ替えて演じているのが面白い。ミニマルな舞台美術で、でかい布一枚がいろいろな場面を構成したりもする。エイジ・オブ・エンライトンメント・オーケストラは小編成ながら味わい深く、歌もいい。カメラで人物がアップになったりするときに、演出の細やかさもよくわかる(舞台を生で見ている人はそこまでわからないんじゃないかしら?)。指揮のエマニュエル・アイムはチェンバロの弾き振りで、なかなか堂に入っている感じ。パフォーマンスは全体的に高水準のようで、舞台もとてもセクシャルかつ緊張感のある優れもの。だけれど、個人的にはやっぱり入っていけないっすねえ、この世界。