先にiPod Touch/iPhone向けのギリシア語辞書(Greek-English Lexicon)を出してくれた同じ開発元が、Latin Dictionary というのも出してくれている。これ、パブリックドメインに入った1879年のLewis and Shortのレキシコンそのもの。さらにその同じ開発元はOld English Dictionaryというのも出している。なかなかに素晴らしい。
以前ドゥンス・スコトゥスの「場所」論がちょっと面白そうだったこともあって、少し前に場所論の系譜を調べようとしたら、デュエムがちゃんと整理していることをどこぞで知った。19世紀フランスの物理学者であり科学史家でもあるデュエム。その大作『世界の体系』10巻本は確かに、まずもって当たりたいリファレンスではあるのだけれど、量に圧倒されてさしあたり全部は読めそうにない(苦笑)。そうなると、縮約版とかがほしいところ。デュエム本人も晩年、そういう縮約版を構想していたという話もあるけれど、それは残念ながら実現していない……。と思っていたら、うかつだったけれど、中世に関しては英訳版でそれに類するものが出ているでないの。『中世のコスモロジー』(“Medieval Cosmology: Theories of Infinity, Place, Time, Void, and the Plurality of Worlds”, tr. Roger Ariew, The Univ. of Chicago Press, 1985-87)というのがそれ。この序文などは、同著作のガイドとしても役に立ちそう。場所論は主に7巻に収録されていることがわかる。抄訳も収録されていて、大いに助かる。『世界の体系』は以前Gallicaでダウンロードできたのに、今はできなくなっているのだけれど、これって再版されたせいかしら?(amazon.frとかで各巻が買えるようだが……)
このところリュート関連ものを2枚ほど聴いている(実は3枚なのだが、とりあえず紹介は2枚にしておこう。もう1枚はちょっと……(苦笑))。まず1つめはラファエル・アンディアによるバロックギター演奏の『ロベール・ド・ヴィゼー、ギター組曲集』(“Robert de Visée: suites de guittare”)。ド・ヴィゼーは17世紀から18世紀初頭にかけて活躍した作曲家、テオルボ奏者だけれど、案外詳しいことは知られていないようで、リュート曲のほかにギター曲も手がけている。当時のルイ14世の宮廷では、リュートよりもギターが人気を博していたというけれど、そういえば以前、そのあたりのレパートリーは埋もれたままだという話を聞いたことがあったっけ。ライナーによると、ド・ヴィゼーは1682年に「王に捧げるギターの書」を刊行しているほか、86年にも「ギター曲集」を出しているのだとか。で、このCD、実は1986年の再版。ライナーにもあるように、研究姿勢が前面に出ている感じの演奏で、表現はやや硬めというか(音質がというわけではないけれど)……でも、フレンチ・バロックのうねり方を味わうという意味ではそれなりに面白い。