英国ものは大陸ものとどこか感覚というか感性というかが違う気がするのだけれど、大陸系の人が弾く英国ものはやはり大陸系に引っ張られる……のだろうか?そんなことを久々に思わせるのが、ラ・ベアータ・オランダ(La Beata Olanda)というドイツ系のグループによる『ジョン、来て、すぐキスして(”John come kiss me now”)』という一枚。表題は伝統的な旋律の曲(たぶん)。リュート界隈では逸名著者のアレンジ譜があり、ポール・オデットとかが弾いていて、よく知られている(と思う)。今回収録されているのは、おそらくはその伝承の旋律を用いたデーヴィッド・メル(17世紀のヴァイオリニスト)の曲。リュート用のものみたいにいろいろ変化していくような面白味はなく、なんだか平坦な印象。というか、このCD、全体になにかこう、やけにまったりゆったりしている印象が強い。決して演奏が悪いというのではないのだけれど、あえて言えば、踊れる舞曲のテンポをわざと落とし、あえて微妙な陰影を付けているという感じ(?)。うーん、こういうアプローチはちょっと久しぶりな気がする。個人的には少しばかりフラストレーションも……(苦笑)。でもこういうのが落ち着いていて良いという向きも絶対あるはず。
ちなみにジャケット写真はリュートのリブ(背中の丸みを帯びた部分)。
John Come Kiss Me Now – Suites, Divisions and Dances for Diverse Instruments / La Beata Olanda