『チェーザレ』7巻

先日、出先の本屋に行ってみたら、普段新刊の売れ筋本が並んでいるコーナー(この間まで『1Q84』とかが並んでいた)が、すべてコミックの新刊になっていた。『のだめ』(いよいよ佳境っすね)とか『神の雫』(これは読んでいない。発酵ものというと『もやしもん』のビール編を堪能したばかり)……ってその下に、惣領冬実『チェーザレ』7巻(講談社)が並んでいるでないの。で、即買い。秋ぐらいかなと思っていたら、もう出ていたのね。この7巻、降誕祭の司祭をつとめるチェーザレが、みずからの政治思想の根幹を語り、それを通じて聖職叙任権闘争の象徴の一つ「カノッサの屈辱」と、ダンテがハインリヒ7世に託した「帝政論」が重ねて描き込まれるという、なんとも贅沢な巻。「カノッサの屈辱」なんか、教科書的には単純に「教皇側の勝ち〜」みたいに言われていたりするけれど(ほんとか?)(笑)、事態はそう単純にあらず、という話を実にドラマチックに描いていて秀逸。ダンテにしても、きわめて政治的な、ある意味とても俗な人物として描かれているのがまた素晴らしい(笑)。

今回はまた、若き日のミケランジェロとかちらっと出てくるし、『ニコマコス倫理学』が言及されていたりもする。ん、レオナルド・ブルーニのラテン語訳はともかく、アンギュロプロス(ヒューマニストらにギリシア語とか教えた人よね)による翻訳本って初耳。あと、アヴェロエス版って?(とアラビア語訳?)これって注解書のことかしらね。うーむ、いずれにしても『ニコマコス倫理学』はこのところ、改めてちょっと注目したいと思っていただけに、なんだかとってもタイムリー(笑)。ちょうどBrillから今年出た、ビザンツでの同書の受容についての論集を注文したばかり。