これも昨年末ごろから少しづつ目を通していたものだけれど、Bompianiの対訳本シリーズで昨年出たポルピュリオスの『反キリスト教論』(Porfirio, “Contro i cristiani”, trad. Giuseppe Muscolino, Bompiani, 2009)。どういう異論をぶつけるのかと思っていたら、直情的とも言える身も蓋もない反論の数々だった(苦笑)。ま、むしろそれだけに、ある意味面白くもあるのだけれど。ポルピュリオスのこの反キリスト教論は文書として残っているものではなく、例によって証言の数々を収集したもの。ドイツのプロテスタントの神学者だったアドルフ・フォン・ハルナックが10年ほどを要してまとめあげ、1916年に刊行した断片集がそれ。今回の対訳本は、ギリシア語部分のみならず、そのドイツ語序文ほかも含めて伊語に全訳したというもの。
それにしても鮮烈なのは内容だ。章立てだけ見ても批判対象の拡がりがわかる。使徒たちの性格や信頼性、旧約聖書の記述、イエスの言動、教義内容など、とにかく手当たり次第に歯に衣着せぬ物言いで文句を言う。たとえば最後のほうにある「復活の教義」をめぐる一節では、「火で燃やされたり虫に食われたりして朽ちた遺体が蘇るとはどういうことなのだ」と言い、「神には奇跡ができると言うけれど、ホメロスを詩人でなくはできないし、イリオス勢が負けないようにもできない。2x2を5にはできない。神とて全能ではない。善なる神は悪だってできない」みたいにあけすけに食ってかかる。ま、全体としては素朴な反論という感じではあるけれども、それにしてもプロテスタントの宗教家がなぜこうした書をまとめ上げたかという点もなかなかに興味をそそるものがあるかも。