製本

昔から革装の本の製本技術には大いに関心があった。そんなわけで、ジョゼップ・カンブラス『西洋製本図鑑』(市川恵里訳、岡本幸治監修、雄松堂出版)を購入してみる。図書館に置くような大型本を購入するのは結構久しぶりかも。児童向けの大型カラー図鑑とかを彷彿とさせ、妙に懐かしい(笑)。で、内容も実にいい。カラー写真満載で、製本技術についてかなり詳しく紹介している。職人の細かな手作業の雰囲気がびしばし伝わってくる。羊皮紙の時代からある製本技術。西欧では今でも袋とじ本があるし(だいぶ少なくはなっているみたいだけれど)、ペーパーナイフで切りながら読み、読み終わったら製本を頼んで保存版とするといったサイクルがあるわけで、そうやって子孫に書物を残していくというのは実に奥深い伝統だと改めて思う。大量消費の「使い捨て本」の対極にある書物文化だ。

でも、一方で大量の印刷・製本をする今どきの本でも、西欧ものは以外に不備があったりする。乱丁・落丁は滅多にないとはいえ、そんなに版の古くない大型辞書とかでも、数ページ分、紙の端が折り込まれてそのまま裁断・製本されてしまっている場合がある。おそらく機械が、ページの裁断時に紙を巻き込んでしまうのだろうけれどね。うちにある羅仏辞書の定番ガフィオ(”Dictionnaire latin-français Le Grand Gaffiot”, Hachette)や、希英辞書の定番中の定番リドル&スコット(”Greek-English Lexicon”, Oxford Press)などはその例。仕方ないので、折れている部分を広げて端をナイフで切り揃えて使っている。ま、乱丁・落丁ではないので、ごく些末な問題にすぎないのだけれど、もうちょっと機械とか改良してほしいよなあ。