装飾の形態学

速攻で買って速攻で読んだバルトルシャイテス『異形のロマネスク』(馬杉宗夫訳、講談社)。これはもう期待以上の内容。ロマネクス建築を飾る柱頭やティンパヌムの装飾芸術を形態学的に分析していくという一冊。各地のロマネスク建築を調査して膨大なスケッチを作り、それを比較検討しながらモチーフが変化する様子を見つけ出すという、さながら言語学でいう形態素分析のような、ある意味とてもオーソドックスな手法なのだけれど、バルトルシャイテス本人の筆によるスケッチは実に多岐にわたっていて(おそらくは使われていないものも含めればむちゃくちゃ膨大な数になるのだろう)、この過剰がとんでもない迫力でもって迫ってくる。それら再録されたスケッチを見るだけでも、ロマネスク装飾がまるで一種の生命をもっているかのように思えてくる。もとは1931年に刊行された博士論文だそうで、それを一般向きに書き改めたものというけれど、いずれにしても結構圧倒されるのは、これを見ると、装飾はあくまで装飾固有の内的なモチベーションで採択され変化していくのであって、たとえばグリーンマンなどにも異教的な意味などなかったのかも、とマジで思えてしまうこと。バルトルシャイテスの出発点が中世美術史だという話はどこかで聞いたことがあったのだけれど、これほどのスゴいものだとは思っていなかった……。