ビュリダンの「推論」論

14世紀に活躍したジャン・ビュリダンとその周辺(先に挙げたザクセンのアルベルトとか)について、個人的に少し詳しく知りたいと思っている。どちらかといえば自然学方面での著作を検討したいわけなのだけれど、ビュリダンのもう一つの軸になっていると思われる論理学方面も見ないわけにはいかない……。ビュリダンの『ソフィスマータ(謬論)』の仏語訳(“Buridan – Sophismes”, trad. J. Biard, Vrin, 1993)の序文によると、ビュリダンの論理学は当然ながらその自然学の基盤をなしていて、無限、原因の種別、量、運動、真空など、いずれの問題についてもビュリダンはその言語的な解明、命題の分析、概念の意味の明確化をつねに念頭に置いているのだという。なるほどね。というわけで、まずはとっかかりとして、比較的短いテキスト『帰結論(推論論)』の校注版(Hubert Hubien, “Iohannis Buridani Tractatus de consequentiis”, Publicaitons Universitaires, Louvain, 1976)を読んでいるところ。まあ、推論の各種パターン(条件命題など)を整理・分類しているものなので、「むちゃくちゃ面白い」というわけにはいかないのだけれど(苦笑)、それでも三段論法(syllogismus)をきっちり推論の特殊形態として、かなり厳密に定義しているところなどは面白い。上の『ソフィスマータ』も同じようなスタンスの著書のようだけど、そちらもまた見ていかないと。