中世ギリシア語

メルマガのほうで取り上げた本だけれど、こちらでも紹介しておこう。ロバート・ブラウンニング『中世・近代ギリシア語』(Robert Browning, “Medieval & Modern Greek”, Cambridge University Press, 1969 – 1999))。古代末期から近代までのギリシア語通史を見渡せる一冊。コイネーがその後どのように各国後の干渉を受けて変化していくかを、代表的な具体例を交えつつまとめている。それにしても興味深いのは、近代語へと繋がっていく話し言葉のギリシア語(あえてそう呼ぶならばだが)の大枠が、中世初期、遅くとも10世紀ごろまでには成立していたのではないか、という議論。書き言葉はというと、プセロスの時代にはすでにして一種の擬古調になっていて、年代記その他の端々に話し言葉の影響らしいものが見えてくるのだという。うーん、となると実際の年代記の具体例が見たいところ。同書はあくまで概説書なので、語形変化などの例は載っているものの、テキストの抜粋などはないので、その点がちょっと残念……なんて思っていたら、Medieval Greek Texts: Being a Collection of the Earliest Compositions in Vulgar Greekなんてのが昨年秋に出ているのでないの。これはちょっと覗いてみたい。