新刊情報(ウィッシュリスト)

当初の予定より遅れて、2巻セットの『ケンブリッジ中世哲学史』(The Cambridge History of Medieval Philosophy 2V Box Set”, Cambridge University Press)がようやく刊行された模様。ハードカバーで、両方合わせて1200ページを超える大作っすね。少々お値段が張るけれど、うーん、今後廉価なペーパーバック版とか出るのかしら。とりあえず様子見……か?そういえば、『ケンブリッジ古代末期哲学史』も2巻本で今年秋の予定になっているっすね。

今回は国内的にはルネサンスものが目立つような……。というわけで、今回はそちら方面もちょっと入れてみた。

宗教音楽ボックス

先日これまた衝動買いしてしまったのが、ハルモニア・ムンディから出ていたボックスセット『宗教音楽』(“Sacred Music”, Harmonia Mundi France, HMX 2908340.33。グレゴリオ聖歌以前から始まって、中世、ルネサンスのポリフォニー、その後のモテット、ミサ曲、オラトリオ、レクイエムなどなど近現代にいたるまでの通史を聴くという趣きの29枚(プラス例によって歌詞の入ったCD-ROM1枚)。聖歌関連とかバッハなどを中心にやはりダブりもあるけれど(苦笑)、それ以外は未聴のものがいろいろあって、値段の割には結構得した感じ。まだ少ししか聴いていないけれど、その中ではボッケリーニのスターバト・マーテルとか(演奏は来日予定のキアラ・バンキーニ&アンサンブル415)、アレッサンドロ・スカルラッティのオラトリオ『カイン(または最初の殺人)』(ルネ・ヤーコプス指揮のベルリン古楽アカデミー)、メンデルスゾーンのオラトリオ『パウロ』(ヘレヴェッヘ指揮、シャンゼリゼ交響楽団、ラ・シャペル・ロワイヤル、コレギウム・ヴォカーレ)などが強烈な印象。特に『パウロ』は勇壮感あふれる壮大な曲想。演奏も言うことなし、みたいな。

プセロス「カルデア古代教義概説」 – 3

6. Μετὰ δὲ τούτους τοὺς πηγαίους πατέρας δοξάζουσιν ἤγουν τοὺς κοσμαγούς· ὧν πρῶτος μὲν ὁ ἅπαξ λεγόμενος, μεθ᾿ ὃν ἡ Ἑκάτη δευτέρα καὶ μέση, τρίτος δὲ ὁ δὶς ἐπέκεινα· μεθ᾿ οὓς οἱ τρεῖς ἀμείλικτοι καὶ ἕβδομος ὁ ὑπεζωκώς.

7. Ἔστι δὲ ὁ ἅπαξ ἐπέκεινα νοῦς πατρικὸς ὡς πρὸς τὰ νοητά, πατὴρ δὲ τῶν νοερῶν ἁπάντων· ἡ δὲ Ἑκάτη νοεροῦ φωτὸς καὶ ζωῆς πάντα πληροῖ. Καλοῦνται δὲ οὗτοι πατέρες καὶ κοσμαγοὶ ὡς προσεχῶς ἐπιβαίνοντες τοῖς κόσμοις.

6. これらに続き、彼らは「父なる泉」もしくは「世界の支配者」を信奉する。その一番目は「端的な一者」と呼ばれ、それに続くのが二番目にして中間の「ヘカテー」、三番目が「超越的二者」である。これらの後に三つの「冷徹なるもの」が来て、七番目に「帯をおびた者」が来る。

7. 「端的な一者」は、知解対象に対して父なる知性としてあり、知的な者すべての父である。「ヘカテー」は知的な光と生命ですべてを満たす。これらは父、さらには世界の支配者と呼ばれる。世界のすぐそばに置かれるからである。

ポルピュリオスの反キリスト教論

これも昨年末ごろから少しづつ目を通していたものだけれど、Bompianiの対訳本シリーズで昨年出たポルピュリオスの『反キリスト教論』(Porfirio, “Contro i cristiani”, trad. Giuseppe Muscolino, Bompiani, 2009)。どういう異論をぶつけるのかと思っていたら、直情的とも言える身も蓋もない反論の数々だった(苦笑)。ま、むしろそれだけに、ある意味面白くもあるのだけれど。ポルピュリオスのこの反キリスト教論は文書として残っているものではなく、例によって証言の数々を収集したもの。ドイツのプロテスタントの神学者だったアドルフ・フォン・ハルナックが10年ほどを要してまとめあげ、1916年に刊行した断片集がそれ。今回の対訳本は、ギリシア語部分のみならず、そのドイツ語序文ほかも含めて伊語に全訳したというもの。

それにしても鮮烈なのは内容だ。章立てだけ見ても批判対象の拡がりがわかる。使徒たちの性格や信頼性、旧約聖書の記述、イエスの言動、教義内容など、とにかく手当たり次第に歯に衣着せぬ物言いで文句を言う。たとえば最後のほうにある「復活の教義」をめぐる一節では、「火で燃やされたり虫に食われたりして朽ちた遺体が蘇るとはどういうことなのだ」と言い、「神には奇跡ができると言うけれど、ホメロスを詩人でなくはできないし、イリオス勢が負けないようにもできない。2x2を5にはできない。神とて全能ではない。善なる神は悪だってできない」みたいにあけすけに食ってかかる。ま、全体としては素朴な反論という感じではあるけれども、それにしてもプロテスタントの宗教家がなぜこうした書をまとめ上げたかという点もなかなかに興味をそそるものがあるかも。

辞書ツールも一新

マシンが新しくなったので、いろいろな言語まわりのツール類も一新しているところ。OSはデフォルトで入っていたのがLeopardなので(Snow LeopardはDVDが同梱されている)それほど大きな変化はなく、とりあえずギリシア語入力に使っているMac UIM(入っているバージョンは0.5.2)もそのまま引き継がれたし(でも新しいバージョンはすでに0.6.5とかになっているので、そのうち更新するかも)、Diogenesなども問題なく動いている。ただ、せっかくなので、MacのEPWING辞書検索ツールとして名高かったJammingに代わり、その後継となったLogophileを試してみているところ。画面はWindows界隈のEBWinやEBPocketに似た感じ。Jammingではもっさりしていたランダムハウスの辞書ファイルがさくさく動くようになっていたので個人的には好印象。

で、そのタイミングでお知らせを頂いたのだけれど(ありがとうございます)、あのEPWING for the classicsの羅英・希英EPWING辞書が更新されている。これは嬉しい。さっそくLogophileにも載せてみているところ。iPod TouchのEBPoketにも入れ直さなくては。