ラ・フォル・ジュルネ、今年も

有楽町の東京国際フォーラムで5日までやっている「ラ・フォル・ジュルネ–熱狂の日音楽祭」。フォーマットに飽きたと言いつつ今年も出かけた。しかも二日連続(苦笑)。なにせ今年はテーマがバッハで、もの凄く濃いバロック音楽祭になっているもんだから、こちらも気合いを入れて出かけたというわけ。各日三公演づつを堪能。以下メモっておこう。

一日目、最初は来日中止になったサンフォニー・マラン・マレに代わる若手グループ「ラ・レヴーズ」。テオルボ奏者(バンジャマン・ペロー)が指揮をするというのが珍しい。技術はともかくどこかまだ「荒削りっぽくない?」みたいな、でも結構今後に期待できそうなグループ。曲目は変更があって、BWV1027(ヴィオラ・ダ・ガンバ・ソナタ1番)、BWV912(トッカータ・ニ長調)、ラインケンのパルティータ4番ニ短調。続く二つめの公演はリチェルカール・コンソート(フィリップ・ピエルロ指揮)によるBWV235ミサ曲ト短調、BWV243マニフィカト・ニ長調。ベルギーのグループ。最近の流れという感じだけれど、古楽系というのを感じさせないオーソドックスで重厚感のある演奏だ。もちろん宗教曲はこれくらいがいいのだけれど。それと対照的なのが、三つめのエウローパ・ガランテ。ファビオ・ビオンティ率いるこのグループはもうすぐ20周年になるそうで。一世を風靡した爆走系(失礼)だけれど、期待通り疾風のような圧倒的ヴィヴァルディ(シンフォニア・ト長調と、「ラ・ストラヴァガンツァ」から)。けれども単に爆走というわけでもなく、パーセルなど、このグループにかかると、なんだか緩急取り合わせて妙な色つやに彩られる(笑)。コレッリの合奏協奏曲作品6もそう。自在な音のさばき方はまさに名人芸。というわけで、これは名演でしょうね。アンコールはテレマンの組曲「ドン・キホーテ」から。これも見事な対比具合。このグループのテオルボ奏者はジャンジャコモ・ピナルディという人らしいのだけれど、これがやけにクリアな音を出していた(ほかのリュート属と違い、テオルボは爪で弾くのもアリなんだそうで、この人などはもろ爪でもって弦をバシバシ言わせている(苦笑))。

二日目はまずピエール・アンタイ指揮でル・コンセール・スピリチュエルによるバッハのコラール・カンタータ2曲(BWV178と93)から。うーん、午後のけだるいときにこの手のカンタータは禁物か。ついつい舟をこいでしまう(笑)。続いてバーバラ・ヘンドリクスほかのペルゴレージ「スターバト・マーテル」。伴奏はドロットニングホルム・バロック・アンサンブルというグループなのだけれど、メンバーなどの情報は不明(パンフに未記載……ってどういうことよ?)。ヘンドリクスはさすがに大物の貫禄というか、お手のものという感じの「スターバト・マーテル」。ものすごいビブラートのかけっぷりに、最初は個人的にちょっと引いた(笑)。でも全体としては迫力勝ち。さかんにブラヴォーが出ていた(えーと、本当はブラヴァですけどね)。締めとなったのはラ・ヴェネクシアーナ(クラウディオ・カヴィーナ指揮)によるブクステフーデ「われらがイエスの御体」。これもすばらしい。もともと隠れた名曲という感じで、生で演奏される機会というのはほとんどないと思う本作。個人的にも生演奏で聴くのは初めて。CDで聴くと結構反復部分などが耳に残ったり、半ば過ぎくらいには弛緩して聞き流すみたいになってしまうことも多いのだけれど(苦笑)、生演奏だとぐいぐい引き込まれるから不思議だ。というか、それくらいの演奏だったということかな。ラ・ヴェネクシアーナというと、モンテヴェルディもののCDくらいでしか知らなかったけれど、ブクステフーデもとても良い。これまた収穫。

明日は行かないので今年はこれで打ち止めだけれど、全体としてバロック系のスター奏者らがこれだけ一堂に会する機会というのはあまりないわけで、このイベントが今後も続くようなら、何年かに一度はバロックものでやってほしいところ。